湯本の古き良きを現在の形に。
温泉街の魅力を世界へ発信。

山口県湯本温泉大谷山荘 取締役副社長
大谷和弘さん(※2019年4月取材当時)
音信川(おとずれがわ)沿いに広がる湯本の温泉街。川のせせらぎと美しい緑が溢れるこのエリアの入り口に創業から137年になる老舗旅館、大谷山荘があります。副社長の大谷和宏さんは、温泉の魅力を通して湯本の街を元気にしようと、まちづくりやインバウンドの強化、地元文化の発信に取り組まれています。

どのような仕事をされていますか?

お客様が望まれていることを叶え、心身ともに癒されうる環境をつくること、お客様の喜びの創造こそが仕事です。サービスを提供していると慢心せず、野に咲く花のように、お客様の心に寄り添えるおもてなしを目指しています。そのために、マニュアルに規定されていることが何のために規定されているのかを踏まえ、状況に応じたホスピタリティ技術で、サービススタンダードを行使できるよう心がけています。

この仕事をしよう決意したきっかけについて教えてください

大学時代、留学先で仲良くなったイギリス人の友人を実家へ招く機会がありました。友人は、旅館での美しい所作や日本の文化など全てのことに感動し、心の底から「ありがとう」と言ってくれたのです。その姿を見たときにこれこそ自分の仕事だと確信しました。友人を通して日本の旅館の価値を感じましたし、地元や日本のことを深く知りたいと思いました。

長門市との関わりを教えてください

現在、長門湯本では星野リゾートをパートナーにかつての温泉街の賑わいを取り戻そうと、新たなまちづくりを進めています。その中で、長門湯本の生活の中心であった公衆浴場「恩湯」を復活させるべく「長門湯守」という組織を立ち上げました。その組織でチャレンジしたいことは、次世代につないでいくためにも、これからのまちのあり方とともに温泉や川といった環境資本や湯本の歴史そのものを見つめ直し、限られた資源の中で、経済を持続的に継続するシステムをつくることです。

地元である湯本の魅力を教えてください

記録に残っているだけでも600 年の歴史を持つ温泉が魅力です。私の役割は、湯本にまつわる神話や歴史を尊重しつつ、現在の生活者のニーズに合わせて、まちの魅力を再構築することだと思っています。成長していく過程で、生活のステージが変わることは当然あることです。しかし、湯本に帰ってきた時に、地域に愛着を持って、楽しい記憶を持って振り返れる場所にしていきたいです。

今後の展望について教えてください

山口県は、東京から見ると観光をする印象が薄い県であると言わざるを得ません。旅行ルートのなかで、ここでしか味わうことのできない体験と組み合わせて、大谷山荘をご利用していただけるかが課題です。この地で長らく商売をしてきたからこそ培って来た地域の方々との信頼関係があるからこそできる、この地ならではの和みを提案できるコンシェルジュのようになりたいですね。
旅館の魅力や湯本の街の魅力など、穏やかな語り口で発せられるお話に、引き込む力を感じる大谷さん。地元の人が地元の文化を大事にした形で、情緒あふれる湯本の温泉街を守っていきたいという言葉が印象的でした。大谷さんの挑戦はこれからも続きます。
山口県長門温泉大谷山荘
山口県長門温泉大谷山荘
☎0837-25-3300
https://otanisanso.co.jp