美羽子プロジェクト(仮)~『松山さん』にインタビュー
人口減少時代、これからの時代を生きていく中高生たちは社会課題を学び、このような時代を形作ってきた大人の試行錯誤や思いを知る中で、何を思い、何を選択するのか?
NPO法人つなぐでは、中高生が日々に刺激を受けて「自分はこれにトライしてみたい」という際に、可能な限りでお手伝いさせてもらっています。(例えば、自分として何を取り組みたいのか企画を深めることや、インタビューなどをする際の場所の提供、企画を進める上でのちょっとした相談にのるなど)
美羽子さんの長門式マイプロジェクト
林業に興味を持ち、情報収集しているという美羽子さん。今回、話をする中で「最終的な目標は国産材の流用を上げて、日本の林業をもっと発展させる!」と掲げ具体的な活動を開始しました。
高校生のうちから、いろいろヒントを探ってみようとのこと、連続でのインタビューになりましたが、記事を書いてくれました。スピード感いい感じです。以下ご覧ください。
自伐型林業担当の地域おこし協力隊 松山晃生さん(30代):
20代の大半を東京で働き、30歳手前でオーストラリアとポルトガルでワーキングホリデーを行い、日本に戻り林業に携わる中で、本格的に起業を目指してスキルをつけるべく、長門市地域おこし協力隊 自伐型林業事業担当として、2023年4月1日より着任されています。1年と数ヶ月ですが、数年ここで暮らされているような雰囲気があります。
はじめに
8月23日!今日は2回目のインタビューでした。インタビューをさせていただいたのは地域おこし協力隊の松山さんです。昨日に続けてということで、いい緊張感をもって臨むことができました。今日もたくさんの面白いお話や、新しい観点を知ることができたので見ていただけると嬉しいです。
↑長門市の作家さんの作品で、オリジナル「木こり」の刺繍入りのキャップらしいです!(いろんな刺繍をいれるご相談が可能だそう!)
長門市しごとセンターで、約90分ほど質問に答えてもらう形で話を伺いました。
質問その1:どんな経緯で長門に来られたのか、教えてください。
回答松山さん:
今、長門市の地域おこし協力隊として働いています。
20代の頃は違う仕事をしていたのだけど、35歳で林業を始めました。まず京都の造林会社に入ったものの、そこでは全く機械化が進んでいなくて、これでは長く体がもたないなと考えました。機械・重機を使って仕事ができるようになりたいと思い、林産※をやっている会社に転職しました。機械はあったものの、固定されたものしか使えなくて。でも林業という仕事を生業にしたい、山林のスペシャリストになりたい、スキルを身につけたら独立して会社を作りたいと思っていたので、すべてを一人ででき、成長できる自伐型林業をしようと思いました。
参考
・「林産」は、造林後に育てた木を切り出してきて市場に出したりする仕事。
・「林業」と聞くと、「木を切る仕事」というイメージが強いのではないでしょうか。もちろん間違ってはいませんが、それは林業の中の一部分。木を切るだけでなく、次の木を植え、育て、山を守るトータルな森林の保全を役割とする循環型産業です。
その仕事は大きく「林産」と「造林」に分かれ、その作業内容はまったく違ってきます。林産は山から木を切り出し、造林は、その後の山を育てる、読んで字のごとし「森林」を「造る」作業。
参照:自然と共に生きる、林業という選択肢 https://wa-rc.jp/column/11673/
(調べる中で、「林産」について一番わかりやすかったので参照させてもらっています)
質問その2:林業に興味を持ったのはなぜですか?
回答松山さん:
ずっと東京で働いて、一般的に「ホワイトカラー」といわれる仕事をしていました。
その後、オーストラリアにワーホリ(ワーキングホリデー)に行ったときに、言語の問題で営業等の仕事ができず農業に従事しました。そこで一次産業って面白いなと感じました。面白いと思ったポイントは2つで、1つ目は汗水を流しながら作業をするということ。2つ目は可能性があるな、ということ。やり方次第でもっと発展させることができるなと思いました。
一次産業をもっと面白くしたい、と考えるとどんどん頭も使うし、体も動かせるし、どちらもできるなと感じました。
次に、ポルトガルに行きました。このときは海に関わる仕事をしようと思って、水産業に取り組んだので、一次産業で言えば残るのは林業かな、という理由です。笑
林業はすごいスケールが大きく『ダイナミック』だと思っています。植えた木が成長して商品になるまで約60年、70年の単位でやっていて、物理的な大きさや時間的なものも含めスケールの大きさに惹かれています。
まあもちろん、バナナ農園もダイナミックだと感じていて。バナナがなっているところを見たことありますか? 一房60キロとかあるので身体も使うのだけど、でもイチゴ農園行ったときは細かいお仕事だと感じたのもあって。
林業は、さらには精神的にもいい。木からリラックス成分が出ているのを知ってますか?森林浴をいつもしている気分。すごくいい職場だなと感じてます。
実は、林業に惹かれているのにはもう1つあって。大学生のときの卒論で、CO2の排出権取引について書いたんです。まだ中高生の頃だったか、京都議定書(1997年)に日本が参加しなかったことにすごく違和感があって。当時から、気候変動にすごく関心がある。林業は、気候変動に少しだけだとしても、直接的に貢献できるという気持ちでやっています。
価値観に合っていて、メンタルにもフィジカルにもやりがいを感じていて、自分の生業にしたいと思っています。
質問その3:林業を、長門市でやろうと思った理由は何ですか?
回答松山さん:
自伐型林業をしようと思って探したら、長門市が地域おこし協力隊を募集していた、というのが回答になるかな。
もちろん、ほかの地域での募集もあったのだけど、移住するとなると、それなりにエネルギーがいるので、長門市のこともたくさん調べました。海もあるし、畜産にも力を入れている。人口も多すぎずいいなと思った。
林業で言うと、国が林業の成長産業化地域※を募集していて長門市が手をあげて選ばれていて。確か全国でも十いくつだけの地域として。林業に力を入れようとしている市政にも惹かれて、ここで働いてみようと思いました。
今も、長門市に移住してよかったと思っています。
参考
長門市は、その取り組みが評価され、平成29年に「国の林業成長産業化のモデル地域」の1つに採択されたのも追い風に、林業に重点的に取り組んでいます。
【リンク:リフォレながとのホームページ】【リンク:令和4年度「新しい林業」に向けた林業経営育成対策のうち経営モデル実証事業 森林管理組織「リフォレながと」を核とした長門型林業経営モデル構築事業成果報告書】
質問その4:これからの林業はどのようになると思いますか?
回答松山さん:
ぶっちゃけわからないね、っていうのが答えになってしまう。どういう視点で見るかになる。株価が予測できないのと同じかも。答え方がよくわからないから、同じ質問されたとして、みわこさんはどう答える?
回答みわこ:
日本の林業は、一回下がるところまで下がったから、少しずつ上がっていくのかなーと。でも上がるか下がるかのどちらかと思います。
回答松山さん:
そういう日本の林業という産業全体の話で言うと、そこに携わる者としては、期待も込めてもう上がるしかないよねって感じ。下がったから上がることしかできないと思う。
でも上がるとしても一気に上がる感じではなく、緩やかだと思う。
質問その5:木のよさとか、林業のよさって何だと思いますか?
木のよさは、炭素固定の役割。よさというか面白さだよね。
木って、素材として使えるし、エネルギーとしても使える 。使い道が多いのは、木しかないと思っている
石油はプラスチックになるしエネルギーにもなるかもしれないけど、とはいえ有限だよね。 木って、持続可能 で植えたら生えてくる。
林業のよさは、繰り返しになるけど環境問題に関わることであることでもあるし、山の中の作業ゆえメンタル的にもフィジカル的にもいい。
今はSDGsが一般的になってきている。木材の価値に気づいてほしいよね
質問その6:木のブランド化はできると思いますか?
回答松山さん:
そもそもブランドってどういうことだと思う?そこを自分なりに定義できていることが大切。
僕自身の考えでは、ブランドとは、信用。歴史があったり・間違いがないもの。例えば、お土産やプレゼントで買って帰りたいと思えるようなもの。
長門市の椎の木をブランド化したいとして、いいところをどのくらい知っているのかも大切。一般的な3つくらいのことしか言えないのに「いい」と言っても伝わらないね。
でも、いいところだけ並べても知識だよね。
椎の木として考えると、「長門の椎」にしかない特徴をアピールすることが必要だと思う。
椎の木の良さを伝えたら、それは「椎の木の良さ」であって「長門の椎の木の良さ」ではない。
例えば、長門の椎の木の特長を活かして家具を作って賞を獲得するとか。ストーリーも作って伝える。そうすれば、一気に可能性は広がると思う。
まあでも、ブランド化ってどうやって実現できるのか、本当に難しいのかなとも感じる。
最後の質問:私は人間と森林、木に距離があると感じますがどう思われますか。
回答松山さん:
すごくあると思う。人が住んでいるところからの距離はあまりないと思うけど、意識的にはものすごく遠いと思う。
僕自身、林業をしていると言うと驚かれる。
ただ、キャンプが好きな人とかは自然への意識もあるけど、林業家だから環境意識が高いとは言い切れない気もする。仕事だからという理由でやっている人が多いから、「森の価値」「木の価値」を意識している人はあまりいない印象がある。
山に関心がない人や好きではない人を、山好きにさせることは難しいと思うのだけど、山林の機能や役割を理解する人が増え、興味を持ってもらうことも価値があるし、人と山の距離が近づくことに繋がると思う。
幼少期に山に入ってない人が、大人になってから入ろうとは中々ならないと思うので、幼少期の森林体験や学習の機会をつくることは大切だと思っています。
◎最後にアドバイスをいただきました!
国産材の流用を高めたいなら、国産材の良さを誰よりもいえるようにするといい。国産材スペシャリストになれるように。
ブランド化をしていく上でも、一番大切なのはいろいろな人に認知をしてもらうことかな。
実際に林業とかかわっている人に深い話を聞けて感謝しかないです。そしてたくさんの驚きと面白さを見つけられたのでとてもうれしかったです。
ありがとうございました。
インタビューを終えて
今日のインタビューをして私はすごく圧倒されました。まだ全然知識が足りないなと。
メインの目標は私自身決まっているのであとはそれをもっと探究し続けなければならないなと思いました。
一方で新たな発見もありました。私は森林・林業・森という観点だけでプロジェクトを行っていました。ですが、環境面から林業をその一環として見ているというお話を聞いて驚きました。まだまだ私の見解が浅いなと思うと同時にもっといろいろな観点から林業を結び付けてみてみようと思いました。
そして、私が達成したい目標である国産材のよさを日本全国の人に知ってもらう、そのためにも国産材スペシャリストになれるようにもっと探究していこうと思います。
今回はすてきなお話をありがとうございました。
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NPO法人つなぐスタッフ
スタッフも一緒にお話を聞かせていただきました。
松山さんは、美羽子さんに対して「これは何の活動なの?」「このプロジェクトで何を目指すの?」「将来の夢はあるの?」などなど、どういうスタンスで話すといいのか考えたくて、もう少し情報をちょうだいと、ぐいぐい質問されます。昨日のインタビューとうってかわって、松山さんは「何の意図で何を聞きたいのか」をしっかり把握してから話し始める論理派でした!
美羽子さんは、昨日の質問を基本にしつつ工夫しようとしていました。
連日のインタビューでもあり、タイプの違う方でもあり。結果として、高校生の知見をひろげる上でも、とてもいい機会になっていると感じて、横でわくわくしました。
なお、松山さんからは、美羽子さんに対して、言葉をかえながら「ぼくで力になれることがあればいつでも連絡してね」「気軽に声かけて」とおっしゃっていただいており、とても前向きな時間になっているように思います。
松山さん、改めまして、このたびは真摯に対応いただき、本当にありがとうございました。
松山さんは、「林業は手段。僕自身は環境問題とか気候変動に興味があって、そこに何らか貢献できるプロセスとして林業に可能性を感じている」と何度もおっしゃっていました。
「木を切った時の手応えが好きって言う人もいるけど、正直、ぼくはそこにもそんなに感動はなくて」とも。
やりがい、というものよりも自身の目的遂行の手段との表現はわかるような、難しいような。
そして、働く以上、林業で「生活費を得る」ことを考えているものの、それは思った以上に確実にできそうとの手応えがあるそうです。ゆえに、環境保全に向けた活動も同時に進めていきたいと考えている、とのお話は興味深かったです。
改めまして、貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。
ルーズリーフに、何枚にも渡ってメモしている姿が印象的でした。
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